DMC is now Dmed. Read more
Communicate for life
by Your science. Your career
2007/11/02
あなたは「鼻の内部は美しい」と考えたことがありますか。 科学誌サイエンスのコンテスト、Visualization Challengeの2007年度優秀賞には、アートでメッセージを伝えている科学者たちが選ばれました。 香港の放射線科医Kai-hung Fung氏は、鼻の内部をはじめ、生物がもつ構造的な美しさを、独自のアートとして表現しました。別の入賞者は、コンピューターグラフィクスの最新技術により、タバコ中毒のメカニズムからハリケーン分析にいたるまで、幅広い分野で教育ツールを作りました。 Article written by Guy Harris
日本の研究者が英語論文でよく使う表現に、「more than」 があります。私が最近チェックした論文でも、次のようなセンテンスがありました。 “The plates should be incubated for more than 18 hours,” この文を見た時、私には非常に曖昧な表現であると感じられました。18.1時間なら良いのか。19時間だったらどうなのか。 この曖昧さは、日本語の「〜以上」という表現が英語の「more than」 と同じであると考えることから生ずるのではないかと思いました。 ネイティブスピーカーでしたら、この文章には「more than」 ではなく「at least」を使うでしょう。 「more than X」とは、「>X」を意味し、Xは対象に含まれていません。 一方、「at least」は、「≥X」を意味し、Xを対象として含んでおり、日本語の「X 以上」という意味に相当します。 「more than 18」とは、「18を含まない、それより多い数」、「more than 3 mL」は「3 mLより多い量」を意味するだけで、小数点の何位までなら許されるのかといった許容範囲は不明です。 したがってナチュラル な英語とはいえず、読み手を混乱させます。 結論として、日本語の「〜以上」を英語で適切に表現するには「more than」 ではなく「at least」を使うことをお薦めします。 [具体例] × : “More than 3 mL of blood should...
2007/09/19
先日、初心者が英語の科学文書を書く時によく抱く疑問について回答を求められました。 「省略語や頭字語に冠詞を付ける場合、 ‘a ’ なのか、それとも‘an’ なのか、どのように決めるのですか?」と。 アメリカ化学会(the American Chemical Society ・ACS)の指針によれば、省略語や頭字語に付す冠詞は、その省略語や頭字語の最初の文字の「発音」に委ねられます。 つまり、最初の一文字の発音が母音(a,e,i,o, and u),なら‘an’を、それ以外なら‘a ’を使うことになっています。 例 The samples were run on an HPLC system Hは“ay-ch”と発音されるので、‘an’が使われています。 The samples were extracted using an SPE column. Sは“ess”と発音されるので、‘an’が使われています。 The results were presented at a CDM conference in 2006. Cは“see”と発音されるので、‘a’が使われています。 The samples were pipetted with...
2007/09/01
先日、論文を学術誌に投稿し 査読者からコメントを受け取った研究者から、その後の対応について相談したいとの連絡をもらいました。彼は、査読者Aの‘Accept after revision’ および査読者Bの‘Reconsider after extensive revision.’ というコメントから、投稿した論文は完全に否定され、アクセプトされそうにないと早合点したのです。 特に査読者Bのコメントは厳しく、多くの部分を書き変えるよう要求していました。彼はそのジャーナルをあきらめ、他のジャーナルへの再投稿を検討すべく、その論文の関連書類を全て私に送付し、意見を求めてきました。 以下は、私の返信です。 Y先生へ はじめに・・・良い返事が来て良かったですね。あなたは、編集者が‘The paper cannot be accepted in its present form and will require extensive revision’と言っているものと判断してあきらめているようですが、この査読者コメントなら、かなり良い結果だと思います。修正なしでアクセプトされる論文などめったにありません。編集者の言葉は厳しく聞こえるかもしれませんが、否定的な評価をしているわけではなく、最終的にアクセプトされない可能性も残されているため、あなたに過度の期待をもたせないようにしているのです。 査読者への回答がアクセプトの鍵 ここが頑張りどころです。査読者へどのように回答するかが、アクセプト可否の鍵を握っています。私は、関連書類を全て読んだ後、次のように提案いたしました。 まず、査読者が指摘している点について、すべて回答します。詳細な回答見本ファイルを添付します。書式は次のようにすると良いでしょう。 Response to Reviewer 1: Comment: The manuscript may benefit from additional analysis of…. Response: As the reviewer noted, there is a...
2007/08/18
オープンアクセス(無料公開)の是非について議論が続いていますが、目下、出版社側の反撃が勢いを増しているところです。Elsevier、 Wiley、 アメリカ化学会など主要出版社が属するアメリカ出版協会(AAP:Association of American Publishers)の一部会員会社は、盛り上がりを見せているオープンアクセス運動に対抗するため、PR(広報)活動の専門家をコンサルタントとして雇い入れました。オープンアクセスが現実化した場合、購読料で支えられている伝統的な雑誌は生き残れないのではないかと懸念しているのです。 英政府は、国立衛生研究所の助成を受けている研究者の論文がアクセプトされた際、論文コピーをPubMed Centralへ提出することを義務づけようとしています。この案を廃止の方向に導くために、AAPのPRコンサルタントは、論文コピーの提出が義務づけられた場合に生ずる懸念や不安材料をアピールするよう提案しました。たとえば「アクセプト後のプロセスがうまく行かず、出版されなかったらどうするのか?」「政府が広めたい情報だけを作為的に一般公開するとしたら、それは検閲になるのではないのか?」といった点を出版社側から問うべきだと。 科学者側の団体がどのような反応を見せるかはまだ明らかではありませんが、商業的出版とオープンアクセス出版との主導権争いの結論は、最終的には世論の動向によって決着するのではないかと思われます。
2007/07/20
先頃DMCは、年2回 国内で行われているある会議の全発表論文の編集作業を行いました。その会議録は、有名な出版社によりインパクトファクターの高い雑誌に掲載されるものです。第9、10回大会の際、その出版元は当該雑誌のインパクトファクターを下げたくないという理由で、動物実験に関する論文は会議録から削除し、掲載しないと連絡してきました。多数の研究者の要請も空しく、また、会議議長が編集アドバイザーであったにも関わらず、編集長は結局方針を変えませんでした。研究者たちの落胆は非常に大きなものでした。 第11回会議の準備期間中、会議議長からDMCに相談がありました。私たちは検討/熟考の末、出版元に対し以下のように指摘しました。 まず、会議録を読む人たちは、会議で発表された全ての論文が記載されていると思うのが当然です。でなければ『会議録』とは言えません。会議で何が発表されのかと同様、何が発表されなかったのかという情報も重要です。会議録は会議の全てを網羅したものでなければ、信頼できるものとはいえません。 雑誌の編集長に会議の学術委員会の役割を決める権限などあるのでしょうか。 その会議が学術的にアクセプトすると認めた論文を出版社が排除する権利はないはずです。 これらの指摘事項を、丁寧かつ失礼のない文章の手紙にし、議長がサインをした上で出版社に送付しました。手紙には、会議の開催費用の中から出版社に相当な金額のお金が支払われている点も追記されました。 かなりの時間が経過した後、出版社から返事が届きました。内容は「動物実験に関する論文も含め、第11回会議の内容は全て雑誌に掲載する」というものでした。「カンファレンス・レポート」と言う新しい出版形式ができました。やった! 良かった! 私たちは心からそう思いました。第11回会議は滞りなく開催され、問題となっていた会議録も、もちろん動物実験に関する論文も含まれた予稿集が発行されました。 それなのに・・・・MEDLINE上に自分の論文が載っていないと知った時の、第11回会議の論文発表者のショックと失望が想像できますか? 出版社に裏切られたのです。出版社は、インパクトファクターを守るために40報の論文を雑誌に掲載しないように操作したのです。我々の知る限り、いまだにそれらの論文はMEDLINEには掲載されていません。オンラインの世界では、それらの会議がなかったことにされてしまっているのです。 これは、まさに出版社が科学の発展/利益を妨害した例といえるでしょう。
2007/07/11
学術論文では、「結果」を表す文章は原則として過去形で書くことになっていますが、その論文中の図や表、その他の内容について述べる時は、現在形で表現しなければなりません。 × : Figure 1 showed the ROC curve for the model. ○ : Figure 1 shows the ROC curve for the model. × : The number of animals in each group was shown in the table below. ○ : The number of animals in each group is shown in...
2007/07/07
一般的に「contain」は、何かがそれよりも物理的に小さなものを入れていることを示す場合に使います。 つまり「contain」は、「内部に、あるものを包容する」という意味です。 例: The glass contains water. The stomach contained undigested food. The sample contained foreign matter. これに対し、「include」は、大きな物、あるいは大きな集合の部分としてある事項を含むことを示します。 例: The price of the plan includes repair service. (すなわち、ここでは大きいものとは「the price」であり、それに含まれる小さい部分が「the repair service」です) The lab animals were checked for signs of disease, including erythema, flaking skin, and swelling. Immunological testing included antibody...
2007/07/05
優れた科学論文を書くためのいくつかの有用なヒントを、ミシガン大学のロッド・リトル教授が示しています。 そのひとつとして、教授は「科学論文は短いほど良い。論文は、簡潔・明瞭でなければならない」と述べています。重要な事項を漏らすことなく、しかし、できるだけ短くというのが教授の主張です。そうすることで、編集者から高い評価を得ると同時に、直に核心に触れることで、読者の強い興味を引き起こすことができます。 またリトル教授は、意味のない形容詞は省き、繰り返しをできるだけ避けるよう薦めています。そうしてできあがるのが、タイトで簡潔な、すっきりとした論文です。原稿の内容を最終的に見直した後、さらにもう一度見直しをかけ、 10%短縮することを目標に努力しましょう。 簡潔・明瞭化の例を二つ挙げておきます。 編集前: The repeated-measures design has been recognized to permit direct study of change over time within individuals, and thus considered to be a better approach than the cross-sectional study design in estimating effects of covariates.(36単語) 編集後: Unlike cross-sectional designs, repeated-measures designs permit direct study of...
2007/06/28
査読は、科学論文の審査における重要なプロセスです。査読の目的は、論文の質を判定することにあります。しかし、この査読のプロセスに欠点があるのではないかと言う研究者もいます。なぜなら、査読者の質にばらつきがあると考えられるからです。それでは、優れた査読者というのはどういうものなのでしょうか?査読者の能力について、経験年数や批評的な評価の経験など、定量可能な変数に基づいて判定する方法はあるのでしょうか? 先ごろCallahamとTercierは、これらの疑問点を検証する研究を行いました。 この研究は、査読者ならびに査読そのものに優劣があることは確かだが、査読の質を左右する因子として簡単に認識できるようなものはない、ということを示唆しています。著者らは、質の高い査読が行われるためには、学術誌が受け取った査読の質について定期的にモニターすることが必須である(一般的には実践されていませんが)、と提言しています。 もっと知りたい方はここをクリック。