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Blog

2008/02/16

Are blogs the future of peer review?

論文査読の世界で新しい試みが始まっています。カリフォルニア大学サンディエゴ校コミュニケーション学の教授が、Noah Wadrup-Fruinというソフトウェア開発会社の協力を得て、論文原稿を一般読者に批評してもらう目的でブログに掲載したのです。ブログ読者のコメント記入を可能にするコンピュータープログラム(CommentPress等)を用い、論文をより良いものにしてくれる意見の収集を図ったのです。この試みが成功すれば、将来、科学を含む広い分野で、論文の査読がブログで行われるようになるかもしれません。 ブログを用いた査読システムは、いくつかの点で既存システムより優れています。例えば、数名の査読者による限定的な評価ではなく、多数の専門家による様々な評価や提案を受けられるため、最終原稿が驚くほど洗練されたものになる可能性があります。新情報の流入により、著者の実力以上の論文になることもあり得るでしょう。しかしながら、ブログ査読者は身元を明かさないこともあるため、著者は提案された意見の内容をよく見極める必要があるでしょう。 ブログ査読の最も優れた点は、著者が即座にフィードバックを受けられることです。著者と査読者との交信速度が上がれば、現在は数ヶ月を要していることが数日で済んでしまうかもしれません。この方式が普及すれば、科学の進歩もスピードアップすることでしょう。新しい情報を早く入手できれば、すぐに次の実験や新しい知見につながるからです。 Wadrup-Fruinによる先駆的な試みは、もしかすると、従来の不具合が多い査読システムの救世主になるかもしれません。

2007/11/02

Using of “more than”

日本の研究者が英語論文でよく使う表現に、「more than」 があります。私が最近チェックした論文でも、次のようなセンテンスがありました。 “The plates should be incubated for more than 18 hours,” この文を見た時、私には非常に曖昧な表現であると感じられました。18.1時間なら良いのか。19時間だったらどうなのか。 この曖昧さは、日本語の「〜以上」という表現が英語の「more than」 と同じであると考えることから生ずるのではないかと思いました。 ネイティブスピーカーでしたら、この文章には「more than」 ではなく「at least」を使うでしょう。 「more than X」とは、「>X」を意味し、Xは対象に含まれていません。 一方、「at least」は、「≥X」を意味し、Xを対象として含んでおり、日本語の「X 以上」という意味に相当します。 「more than 18」とは、「18を含まない、それより多い数」、「more than 3 mL」は「3 mLより多い量」を意味するだけで、小数点の何位までなら許されるのかといった許容範囲は不明です。 したがってナチュラル な英語とはいえず、読み手を混乱させます。 結論として、日本語の「〜以上」を英語で適切に表現するには「more than」 ではなく「at least」を使うことをお薦めします。 [具体例] × : “More than 3 mL of blood should...

2007/09/01

Advice to authors: Let’s be more positive.

先日、論文を学術誌に投稿し 査読者からコメントを受け取った研究者から、その後の対応について相談したいとの連絡をもらいました。彼は、査読者Aの‘Accept after revision’ および査読者Bの‘Reconsider after extensive revision.’ というコメントから、投稿した論文は完全に否定され、アクセプトされそうにないと早合点したのです。 特に査読者Bのコメントは厳しく、多くの部分を書き変えるよう要求していました。彼はそのジャーナルをあきらめ、他のジャーナルへの再投稿を検討すべく、その論文の関連書類を全て私に送付し、意見を求めてきました。 以下は、私の返信です。 Y先生へ はじめに・・・良い返事が来て良かったですね。あなたは、編集者が‘The paper cannot be accepted in its present form and will require extensive revision’と言っているものと判断してあきらめているようですが、この査読者コメントなら、かなり良い結果だと思います。修正なしでアクセプトされる論文などめったにありません。編集者の言葉は厳しく聞こえるかもしれませんが、否定的な評価をしているわけではなく、最終的にアクセプトされない可能性も残されているため、あなたに過度の期待をもたせないようにしているのです。 査読者への回答がアクセプトの鍵 ここが頑張りどころです。査読者へどのように回答するかが、アクセプト可否の鍵を握っています。私は、関連書類を全て読んだ後、次のように提案いたしました。 まず、査読者が指摘している点について、すべて回答します。詳細な回答見本ファイルを添付します。書式は次のようにすると良いでしょう。 Response to Reviewer 1: Comment: The manuscript may benefit from additional analysis of…. Response: As the reviewer noted, there is a...

2007/08/18

Open access part 2

オープンアクセス(無料公開)の是非について議論が続いていますが、目下、出版社側の反撃が勢いを増しているところです。Elsevier、 Wiley、 アメリカ化学会など主要出版社が属するアメリカ出版協会(AAP:Association of American Publishers)の一部会員会社は、盛り上がりを見せているオープンアクセス運動に対抗するため、PR(広報)活動の専門家をコンサルタントとして雇い入れました。オープンアクセスが現実化した場合、購読料で支えられている伝統的な雑誌は生き残れないのではないかと懸念しているのです。 英政府は、国立衛生研究所の助成を受けている研究者の論文がアクセプトされた際、論文コピーをPubMed Centralへ提出することを義務づけようとしています。この案を廃止の方向に導くために、AAPのPRコンサルタントは、論文コピーの提出が義務づけられた場合に生ずる懸念や不安材料をアピールするよう提案しました。たとえば「アクセプト後のプロセスがうまく行かず、出版されなかったらどうするのか?」「政府が広めたい情報だけを作為的に一般公開するとしたら、それは検閲になるのではないのか?」といった点を出版社側から問うべきだと。 科学者側の団体がどのような反応を見せるかはまだ明らかではありませんが、商業的出版とオープンアクセス出版との主導権争いの結論は、最終的には世論の動向によって決着するのではないかと思われます。

2007/07/20

Does science publishing damage science?

先頃DMCは、年2回 国内で行われているある会議の全発表論文の編集作業を行いました。その会議録は、有名な出版社によりインパクトファクターの高い雑誌に掲載されるものです。第9、10回大会の際、その出版元は当該雑誌のインパクトファクターを下げたくないという理由で、動物実験に関する論文は会議録から削除し、掲載しないと連絡してきました。多数の研究者の要請も空しく、また、会議議長が編集アドバイザーであったにも関わらず、編集長は結局方針を変えませんでした。研究者たちの落胆は非常に大きなものでした。 第11回会議の準備期間中、会議議長からDMCに相談がありました。私たちは検討/熟考の末、出版元に対し以下のように指摘しました。 まず、会議録を読む人たちは、会議で発表された全ての論文が記載されていると思うのが当然です。でなければ『会議録』とは言えません。会議で何が発表されのかと同様、何が発表されなかったのかという情報も重要です。会議録は会議の全てを網羅したものでなければ、信頼できるものとはいえません。 雑誌の編集長に会議の学術委員会の役割を決める権限などあるのでしょうか。 その会議が学術的にアクセプトすると認めた論文を出版社が排除する権利はないはずです。 これらの指摘事項を、丁寧かつ失礼のない文章の手紙にし、議長がサインをした上で出版社に送付しました。手紙には、会議の開催費用の中から出版社に相当な金額のお金が支払われている点も追記されました。 かなりの時間が経過した後、出版社から返事が届きました。内容は「動物実験に関する論文も含め、第11回会議の内容は全て雑誌に掲載する」というものでした。「カンファレンス・レポート」と言う新しい出版形式ができました。やった! 良かった! 私たちは心からそう思いました。第11回会議は滞りなく開催され、問題となっていた会議録も、もちろん動物実験に関する論文も含まれた予稿集が発行されました。 それなのに・・・・MEDLINE上に自分の論文が載っていないと知った時の、第11回会議の論文発表者のショックと失望が想像できますか? 出版社に裏切られたのです。出版社は、インパクトファクターを守るために40報の論文を雑誌に掲載しないように操作したのです。我々の知る限り、いまだにそれらの論文はMEDLINEには掲載されていません。オンラインの世界では、それらの会議がなかったことにされてしまっているのです。 これは、まさに出版社が科学の発展/利益を妨害した例といえるでしょう。

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