AIアクセント ― 1,500万件のアブストラクトが明らかにした新たな問題
2025年7月23日、執筆者:Guy Harris
バイオメディカル出版における変化が、データによって確認されました。
Kobak らが Science Advances 誌に発表した語彙分析(vocabulary analysis)によれば、PubMed に収録された1,500万件のアブストラクト(abstract:論文要旨)を調査した結果、2023年以降、"delve" という単語の使用頻度が過去の水準の10倍に急増していたことが判明しました。"Pivotal" や "meticulous" といった単語にも同様の急増が見られました。研究チームの結論は驚くべきものです。2024年に出版されたバイオメディカル分野のアブストラクトの13.5%に、AI生成の痕跡が認められるというのです。コンピュータサイエンス分野では、この数字は何と40%に達しています。
この事実が当社のお客様にとって重要である理由は、単なる統計の問題にとどまりません。
長年にわたり、英語を母語としない研究者が直面してきた課題は明確でした。科学的内容は確かであるにもかかわらず、英語表現がその研究者を「外部者」として際立たせてしまうという問題です。査読者(reviewer)は "the language needs to be improved"(英語を改善する必要がある)とコメントし――このコメントについては過去の記事で詳しく論じてまいりました――著者はネイティブスピーカー水準の英文に仕上げるために英文校正(English editing)を依頼する、という流れでした。
AIはこの問題を解決するはずでした。そして、狭い意味ではたしかに解決したと言えるでしょう。日本人研究者であっても、文法的に完璧な英語の文章を数秒で生成できるようになりました。言語の壁は、事実上崩れたのです。
しかし、その代わりに新たな壁が立ち上がってしまいました。"Delve," "crucial," "landscape," "comprehensive," "notably" といった単語が、ChatGPT特有の高頻度で使用されると、それらは一種のAIアクセント(AI accent)として機能するようになるのです。編集者や査読者の頭の中に、「これは機械が書いたものだ」というヒューリスティック(heuristic:直感的判断)を引き起こしてしまいます。文章自体は完全に正しいかもしれません。論旨も的確かもしれません。しかし、かつての「英語力不足」というスティグマ(stigma:負の烙印)と同じくらい不利に働きうるスティグマを、その文章は帯びてしまうのです。
残念ながら、ここには明らかな皮肉があります。AI支援から最も大きな恩恵を受けるはずの研究者――出版プレッシャー(publication pressure)の下にある非英語母語話者――こそが、AIを全面的に採用する可能性が最も高く、したがってAIアクセントを帯びた文章を生み出す可能性が最も高いのです。ある形の言語的不利を、別の形の言語的不利に置き換えてしまったということではないでしょうか。
当社の業務においても、この変化は実感されるようになっています。AIで起草あるいは推敲されたことが明らかな論文が届くようになりました。文法は完璧です。語彙は不自然なほど均一です。文章には滑らかで摩擦のない質感があり、逆説的ですが、それがかえって説得力を弱めてしまっています。本来の科学論文には独自のテクスチャー(texture:手触り)があり、著者の個性があり、時には粗さもある――それこそが、人間の頭脳が生み出した文章であることの証なのです。
それに応じて、当社の役割も変化しています。かつては文法を修正することが中心でしたが、今ではますます人間の声を取り戻す(restore human voice)作業が求められるようになっています。AIが好む表現を、自然で多様な、著者自身が実際に使うような言葉に置き換えていく作業です。"Delve" を取り除き、"crucial" を取り除き、"notably" を取り除き、その著者らしい言葉に差し替えていくのです。
こうして、英文校正はもはや純粋な言語サービスではなくなりつつあります。今やそれは、少なくとも部分的にはオーセンティシティ・サービス(authenticity service:真正性を保証するサービス)へと変容しています。出版される論文が、著者名を冠するその研究者自身によって書かれたものとして読まれるようにする――これが新たな使命と言えるでしょう。
語彙の急変を示すデータは、AIがすでに科学の言語的景観(linguistic landscape)を不可逆的に変えてしまったことを物語っています。研究者がAIを使うかどうかは、もはや問題ではありません。大多数の研究者はすでに使っています。問題は、AIの使用痕跡が文章に残るかどうか、そしてそれが残った場合にどのような結果が生じるかということなのです。
AIを論文作成に責任を持って活用したいと考えている研究者へ、具体的な提案があります。AIはゴーストライター(ghostwriter)としてではなく、あくまでツールとして使うべきです。まず自分自身の言葉で草稿を書いてください。AIの使用は、特定の限定的な作業に留めるのが望ましいでしょう――文法チェック、難しい文の表現案の提示、引用形式の確認など。そして最終的には、人間の編集者にレビューを依頼してください。誤りのチェックだけでなく、著者の「声」が保たれているかどうかの確認も含めて、です。