原稿VS.査読者
2009年10月11日、執筆者:Nicolas Bottari
ジャーナルへ投稿された論文のアクセプトの可否は、査読者の判定でほぼ決まります。
Kliewerらは、American Journal of Roentgenology (AJR)誌上で、アクセプト可否の決定には「論文の内容そのもの」と「査読者の特性」が関連していると述べています。論文の内容については、科学的な重要性、レベルの高さ、提出国などが重視されています。一方、査読者の特性に関しては、年齢と研究者としてのランクが大きな因子です。
科学的なレベルの高さが重要であることは自明ですが、提出国が関係するのはなぜでしょうか。調査期間中にAJR誌で査読された論文(196報)のうち、23.5%が北米、12.8%がヨーロッパ、2.5%がアジアから提出されたものでした。リジェクト率は、北米の論文は37.2%、ヨーロッパのものは59%、アジアのものは80%でした。各地域からの提出論文数とリジェクト率は、比例していません。Kliewerらは、北米以外の国からアメリカのジャーナルに投稿された論文は、「書き方と議論のスタイルが標準的でなく、それが足かせとなっている」可能性がある、と示唆しています。
論文の内容関連では、科学的重要性が最も中心となりますが、では査読者は、主題が妥当かどうかをどのようにして判断するのでしょうか。実はこの部分で、査読者の特性が絡んでくるのです。Kliewerらは、査読者の年齢が高く、研究者としてのランクが高いほど、査読が厳しくなることに気づきました。評価が偏向している可能性があります。つまり「自分の経験や信念と一致している視点やデータに対して好意を示す傾向」です。査読者が高齢なほど、主題を妥当でないとして却下する傾向があるのに対し、若い査読者ではよりオープンな傾向になると思われます。
この報告は、査読者の特性が論文そのもののクオリティと同様に重要であることを示しています。上述のAJRへの投稿論文(196報)の統計的評価によると、ばらつきの原因の16%は査読者の特性によるものでした。これに対し、論文の内容によるばらつきは7%でした。そして原因不明のばらつきは77%。このように、論文の評価には多くの未知でコントロール不能な因子が関与しています。7%に関しては、科学的なレベル、優れた英語、主題の妥当性により、有利となるチャンスが与えられるわけです。