先入観をもたせやすい単語は避ける
2010年8月7日、執筆者:Guy Harris
論文を書く際、研究者は読者に間違った先入観を与えそうな単語の使用はできるだけ控えたほうが良いでしょう。なぜならば、そのような単語は、単語そのものに偏った意味があるため、単語を見ただけで読み手が先入観を持ってしまうのです。
例えば、多くの論文やレポートで“severity”が病気の重症度を示す単語として使用されています。ところが、英語のネイティブスピーカーにしてみれば“severity”と言う単語そのものから悪い病状が連想されるため、良い結果の際に“severity”を使用されていると奇妙に感じられます。
X: “The doctor said that, due to the severity of the disease, the patient would survive.” (implied: “The patient will live, so the disease is not severe”)
医者は、病気の重症度次第で患者は生き延びるだろうと言った。(暗に「病気は深刻ではないので、患者は生き延びるだろう」と言っている)
O: “The doctor said that, due to the severity of the disease, the patient would die.” (implied: “The patient will die, so the disease is severe”)
医者は、病気の重症度次第で患者は死ぬだろうと言った。(暗に「病気は深刻な状態なので、患者は死ぬだろう」と言っている)
読者に誤解を与えないためには、“progress” または“degree”の様な中立的な単語を用いるか、あるいは状況を具体的に記述したほうが良いでしょう。
“Disease progression was graded on a scale of 1 to 5, with 1 representing no progression and 5 representing a severe case.”
病気の進行は1〜5までの5段階に分けられ、1は進行がない状態を表し、5は深刻な状態を表す。
“The doctor said that, due to excellent prognosis, the patient would survive.”
医者は、予後の状態が良ければ、患者は生き延びるだろうと言った。
とは言っても、非常に病気の状態が悪い場合を述べる際は、読み手が単語そのものから「悪い」という連想をしても問題はないので、 “severity”のような単語を使っても必ずしも間違いではありません。
同様に、物事の起こり易さを表現する単語として “ease” が、しばしば使用されています。
しかし “ease” という単語も、単語そのものに偏った意味があります。 degree of ease(起こり易さ)を中立的に表すのではなく、むしろ “easy” (簡単に起こる)と言う意味合いのほうが強いのです。
起こり易さを示す場合には、偏りのない“likelihood” または “tendency”のような単語を使うほうが良いと思われます。
X: “The ease of dissociation from the M3 receptor…” [M3受容体からの解離のし易さ…]
O: “The likelihood of dissociation from the M3 receptor…”
O: “The tendency towards dissociation from the M3 receptor…”
Article written by Guy Harris