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新薬開発の最前線

2009年1月13日、執筆者:Nicolas Bottari

かつて日本の製薬会社は、既存の薬や外国から技術導入して製造した薬を国内販売して利益を得ていました。しかしながら近年、厚生労働省は海外の製薬会社に対する規制を緩和する一方で、国内製薬会社のモノマネ的な薬に対しては承認を厳しくしている傾向があります。日本の製薬会社は、革新的新薬の開発を要求されているのです。それにも関わらず、新薬開発の姿勢は以前とあまり変わっていません。大半は旧来の方法で研究開発を続けているのです。果たしてその様な戦略で、海外企業と新薬開発競争ができるのでしょうか。

アメリカ及びEU諸国の製薬会社では、新薬開発のために、大学や大学が設立した企業、バイオテクノロジー関連企業などと共同研究をしていることが一般的です。また、大手製薬会社では、大学に研究助成金や研修プログラム奨励金を出して若手研究者の活動を支援すると共に、創造力のある研究者との永続的な関係維持に取り組んでいます。このような企業と研究者の互恵システムでは、製薬会社は最先端の発見の特許を入手できることを条件に、個別研究に出資することもあります。

日本の製薬企業はいまだ研究開発のほとんどを自社で行っています。いくつかの会社で大学(主にアメリカの)と共同研究を行ってはいますが、業界全体としては、国内のバイオテクノロジー関連会社との共同開発は消極的であると見受けられます。Kneller(2003年)によると、日本の大手製薬会社4社の主要な新薬開発手段は以下の通りです。

1 自社での研究開発
2 海外の大学(主にアメリカ)との共同研究/開発(最新バイオテクノロジー導入)
3 技術のスキャニング=取り込み(他企業のチェック/監視による)
4 国内の大学との共同研究・開発(コミュニケーションの容易さが理由と思われる)

日本の製薬会社は、修士課程卒の社員を自社研究所で育成する習慣があります。これも、結果的には伝統的な自社依存の研究開発システムに寄与するだけです。外部から技術や知識導入の必要性が高まっている今、企業は「研究員が他機関、そして時として自社の研究成果をも正当に評価する訓練を受けていない」ということに気づきつつあります。


企業戦略の違いはどういう結果を招くでしょうか?Knellerの研究(2003年)では現在、日本と海外の新薬発見率は同程度としています。しかし、日本の上位8社が最新バイオテクノロジーの導入を海外(主にアメリカ)企業に依存しているとも報告されています。これらの会社では、しばしば中小企業から新薬のライセンスを買っているとも報じられています。生物学、生物情報学の技術基盤がいっそうの広がりを見せていることを考えると、将来的に外部への依存が増えるのは間違いないでしょう。最大手の企業でも、医薬品開発を外部に頼る日が来るのではないでしょうか。そこに日本のバイオテクノロジー企業の未来があるのかもしれません。10年ほど前まで日本でCRO(研究試験受託機関)はほとんど利用されていませんでしたが、現在では新薬承認申請前に必要な基礎研究はCROに外部委託することが一般的になりました。今後、日本のバイオテクノロジー企業が新薬発見のために活用される日が来ることでしょう。大手製薬会社にとって、CRO等の専門家が、急激に増加する新しい研究技術への対処および研究成果の評価においても役立つのではないでしょうか。

海外の製薬企業はすでに日本国内でマーケティングを行っており、国内企業が生き残るためには国際競争力をもつ企業に生まれ変わらねばならないことは明らかです。革新的な優れた新薬を早く開発することが何よりも求められているのです。それには、既存の企業理念にとらわれない新人材の雇用方法等の新たな戦略が不可欠と考えられます。