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‘The language needs to be improved’ (英語を改善する必要がある)という査読コメントへの対応方法

2022年7月29日、執筆者:Guy Harris

日本人著者の論文に対し、最もよく見られる査読コメントの1つに、‘The language needs to be improved.’ (英語を改善する必要がある) があります。

多くの著者は新たな論文を投稿する前に英文校正サービスを利用しているため、このような査読コメントを受け取ると、利用した校正サービスが正当なものだったのかどうか疑問に思いながら、投稿前に依頼した校正会社へ査読後修正版原稿のチェックを依頼することになります。そして「査読者から『英語を改善する必要がある』とコメントされたので、もう一度英語を確認してもらえませんか」と依頼するのです。その場合、校正会社は、投稿前に一度校正した原稿を全て再チェックするより他ありません。

当社がこれまで携わった査読後修正論文のうち、約3分の1で同様の問題が発生しています。時には、査読者自身の英語能力が非常に乏しく、英語の良し悪しの判断を下すことが明らかに不可能な非英語ネイティブからのコメントであることも多々あります。当社で再度原稿を確認した場合も(校正料金の二重請求は致しません)、エラーが見つかることはめったにありません。エラーがある場合は、当社が投稿前の最終チェックをした後に(=当社の校正が完了した後に)、著者が新たな文章を追加して投稿したために発生したエラーがほとんどです(つまり、投稿した原稿には当社で校正していない新しい文章が含まれていたということになります)。また、投稿前は他社に校正を依頼した論文を、査読修正後は当社に校正依頼をされる事もよくありますが、投稿前に校正を行った他社のエディターが英語のネイティブでなかったというケースもあります。(原稿を見ればすぐにわかります。)

これは何十年も続いている問題です。今から約40年前の 1980年代、私たちのパートナーであった故パトリック・バロン 先生(Patrick Barron 元東京医科大学国際医療コミュニケーション学部長)は、かつて、国際的に評価の高い日本人臨床医による非常に画期的な論文を、インパクトファクターの高いジャーナルへ投稿するため、何時間もかけて校正を行いました。しかしジャーナルは、英語に問題があると論文をつき返してきました。困ったバロン先生は、一語一語再確認しましたが、問題点は見つかりませんでした。著者はバロン先生を信頼して、「問題点が見つからなかったので修正変更は無い」という回答とともに論文を再度ジャーナルへ送り返しました。それに対しジャーナルは、フォローアップのコメントを一切せずに、投稿されたままの状態の論文を掲載したのです。

昔も今も、日本人著者は「英語を改善せよ」という査読者の要求が、正当な理由や誠意あるものなのか、「著者が日本人であり、査読者が他に特に何もコメントすることがなかったから」という理由だけで要求したものなのか、毎回悩まなければなりません。 肝心なのは、真摯に検討されていないたった一つの査読コメントが、論文執筆に対する著者の自信を失わせ、出版も遅れ、時間を無駄にしてしまう可能性があるということです。

そこで、この状況を取り巻く問題点を踏まえて、著者の回答をサポートするための「フローチャート」を作成しました。

現在、Elsevier、Springer Nature、Wiley、Wolters Kluwerなどのほとんどの大手出版社が、各々の校正サービスを提供しています。この動きは、オープンアクセス運動が出版社の伝統的で莫大な利益を脅かし始めた、2005年頃に顕著になりました。オープンアクセスで失った収益を補う方法の一つとして、出版社は新しいサービス‘Author Services’を導入し、校正事業をこれに含めたのです。出版社は社内の校正リソースが十分でなかったため、校正作業を利益分配ベースで大手の校正会社へ外部委託しました。たとえば、Wolters KluwerはEditageと提携していて、Wolters Kluwerは、Editageとの取引関係を公然と認めています。しかしながら、他の大手出版社のほとんどはその様な業務提携を認めていません。代わりに、「ホワイトラベル」を手段として使っているのです。出版社は校正作業から利益を得ており、論文著者が雑誌出版社に校正を依頼した原稿は、ホワイトラベルの校正会社に再委託され、両者は利益を分け合っているのです。

このようなアウトソーシングが行われる前は、ジャーナルが論文の校正が必要であると著者に指摘した場合も、利益相反はありませんでした。しかし今では、論文著者に校正を勧め、かつ、出版社独自の校正サービスを提供しているジャーナルは、間違いなく利益相反を抱えています。そして、ジャーナルが論文著者に対して利益相反に関する報告をどれほど厳格に要求しているかを考えると、ジャーナルも自らの利益相反について報告するべきだ。と要求するのが合理的ではないでしょうか。

投稿前に適切な校正を受けた論文(なおかつ投稿前に校正済みの論文に追加修正を行なわなかったもの)に対して、この様な査読者コメントを受け取った場合、著者は、慎重に回答した方がいいと考えるかもしれません。私たちの経験では、英語に関するコメントは下記の2つのグループに分類できます。

1.きちんとした説明やエラーの例がなく、曖昧なコメント

2回目の査読の際のコメント例:

‘The grammar has to be revised and improved (文法を修正/改善する必要があります)’

というコメントは、実用的でも具体的でもなく、例も提示されていません。査読者に期待される厳密さを欠いていて、まるで「ポイと投げられた」様な適当なコメントに見えます。しかし、これはよくある典型例で、ジャーナルから著者宛のカバーレターの中では、出版社の校正サービスを受ける様に勧めていました。

2.エラーの具体例を含む、詳細で実用的なコメント

この様なコメントには、通常、査読者が不適切と見なす一連のエラー、または適していない表現がリスト表示されています。

では、著者はどのように対応すべきでしょうか? 以下に著者が査読コメントに回答する際に役立つフローチャートを掲載します。 フローチャートの3つの結論(当社提案)は下記の通りです。

  1. 校正証明書を添えてジャーナルへ再投稿しましょう。査読者にエラーの具体例の明示をお願いしてみましょう。

  2. 査読者コメントにどう回答するのか校正会社に考えてもらいましょう。追加で加筆修正した未校正箇所はハイライトをして、校正会社に確認をお願いしましょう。校正証明書を発行してもらいましょう。

  3. 校正証明書を発行してくれる校正会社に論文を校正してもらいましょう。

論文著者にとって、このような査読コメントへの対応が困難であることは非常に良く理解出来ます。著者は自分の論文ができるだけ早くアクセプトされることを望んでいるため、ジャーナルとの関係を悪化させる様な対応や、査読者に協力的でないように見える態度は避けたいでしょう。その様な理由から、査読者の意見に同意出来ない場合でも、ただただ黙認することを選んでしまうケースがあるのです。しかし、このようなケース、または他の要因でも構いません、投稿のプロセスで困難に直面した著者のために、当社はいつでもサポートする準備ができています。当社のサポートによる成功例は数多くあります。是非、まずは当社にご相談下さい。