ハリウッドは英語学習法を提供してくれる
2015年8月04日、執筆者:Guy Harrisカテゴリー: Language/Grammar
長くお付き合いをいただいている方が、日本にも拠点を置く海外ジェネリック医薬品メーカーに転職しました。その方はネイティブのように英語文を書く力を持っているのですが、海外本社とビデオ会議をする時には大変苦労をするそうです。
ある時、“I do not catch half of their conversation and have difficulty in discussions with them.”(半分も聞き取れないので議論に参加できない)とこぼされました。
そして、“一体どうすればヒアリングとスピーキングの力を伸ばすことができますか”と聞かれました。私は、“DVDかブルーレイデスクあるいは動画配信サービスHulu(フールー)はありますか”とたずねました。
もし、そうしたツールがあるのであれば、映画を観ながらスクリーン上の字幕を書き取ればよいのです。つまり、会話を聞きながらその表現をメモしていく方法が極めて有効です。
暗記していくとよいですね。いいなと思う文章を書き取り、繰返し口にするのです。話し方の調子であるイントネーションもマネましょう。暗記するとオームのように、考えることなく自然と口に出てくるようになります。2-3カ月もすれば、会話に必要な語彙も豊富なものとなっているはずです。
私が誰にでもこの方法を薦めるのは、簡単で効果的、且つお金も使わず楽しいからです。ハリウッドは、これ以上ない英語学習法を提供してくれているのです。
"Could"の正しい使い方
2015年3月27日、執筆者:Courtney Cummingsカテゴリー: Language/Grammar
基本的に科学論文とは過去形で書かれるものであり、著者は可能な限り簡潔でネイティブな表現の文章を過去形で書こうとする。そのため、~was/were able toという表現があれば語数の少ないcouldを選択するのが一般的である。
しかし、驚かれるかもしれないが、実際は、~was/were able toの使用を勧められることのほうが多い。理由は2つある。
1. Couldにはふたつの意味合いがある。“できる”という能力と条件付けあるいは未来における可能性の示唆である。以下の会話にその例をみてみよう。
例 | Couldの用法 | |
---|---|---|
1 |
A: “What do you want to do today?”
B: “Hmm, we could go to the store!” |
未来における選択肢を提示 |
2 |
A: “What do you want to do today?”
B: “We could go to the store if we had a car.” |
条件が満たされれば[前提は、満たされない]そのことが実現できることを示唆 |
3 |
A: “Did you go to the store yesterday?” 昨日は買い物に行ったの? B: “I could have gone if I’d had a car.” クルマがあったら買い物に行けたのだけど。 |
上と同じく、過去に、条件が満たされていたならば[前提は、満たされなかった]そのことが実現できたことを示唆 |
2. “Could”はどちらかというと口語表現(話し言葉)であり、会話では“was/were able to”よりも多く使われる。反対に、“could”を科学論文に使うのは適切ではない。
科学論文において、何かが起こったという事実を強調したい時は“could”よりも“was/were able to”のほうがより自然である。すなわち、科学論文のなかで研究成果を記述する時、日本語で“…することができた”という場合は“could”ではなく“was/were able to”を使用するほうがよい。
A. 何かが“できた”ことを報告する時は“was/were able to”を使用する。
日本語表現 | 良くない英語 | 良い英語 | |
---|---|---|---|
1 | 計算することができた | “We could calculate the dosage accurately using our newly developed method.” | “We were able to calculate the dosage accurately using our newly developed method.” |
用量は我々の開発した方法により正確に計算することができた。 | |||
2 | 測定することができた | “We could determine the concentration in plasma.” | “We were able to determine the concentration in plasma.” |
血漿中濃度を測定することができた。 |
B. 未来における可能性を記述する時は“could”を使用する(ifやpotentiallyといった可能性を示唆する語が存在)。
日本語表現 | 良くない英語 | 良い英語 | |
---|---|---|---|
1 | …であれば、…することができた | “We were able to conduct further studies if our budget were larger.” | “We could conduct further studies if our budget were larger.” |
もっと予算があれば、次の研究を行うことができたのだが(内容は過去の記述ではなく、未来における可能性の示唆)。 | |||
2 | …であれば、…することができた | “These findings were able to potentially be of use in clarifying this compound’s side-effects.” | “These findings could potentially be of use in clarifying this compound’s side-effects.” |
これらの知見は、被験薬の副作用を明らかにするうえで有用な情報であると考えられる(この内容も過去の記述ではなく、未来における可能性を示唆)。 |
「recent」の本当の意味
2014年3月19日、執筆者:Steve Tronickカテゴリー: Language/Grammar
論文読者の大多数は、「最近の (recent) 論文」とは過去12箇月以内に出版された論文を意味すると考えています。一方、DMCに相談してくる執筆者のほとんどは、過去5〜10年に出版された論文を「最近の論文」と考えています。「最近の」という表現の意味を、読者に正確に伝えるため、できるだけ本文中や引用文献に当該論文の出版年を記載する様にするべきでしょう。
あなたの論文は(オンラインでもハードコピーでも)時として出版までに予想外の期間を要することもあり、それが出版される時には引用文献のほとんどが「最近の論文」ではなくなっているかもしれないのです。
Google search operatorとPubMedで英文をより良いものに
2013年12月12日、執筆者:Guy Harrisカテゴリー: Language/Grammar, Paper Writing
英文をより良いものにする、あるいはある表現があなたの専門分野で普通に使われている表現かどうかを確かめるGoogle search operatorとPubMedを用いた方法をお奨めします。
我々が著者からの質問に答える際にGoogle search operatorをどのように利用しているかをお示ししましょう。
次の英文は著者が最初に書いたものです:
I/E ratio significantly decreased in the presence of ketoconazole
これを我々は次のように変更しました
I/E ratio was significantly decreased in the presence of ketoconazole.
それに対して著者から次のような質問があしました:「1点質問させてください。文を受動態(Passive)にされた理由を知りたいのですが,よろしいでしょうか?」
以下が我々の回答です:
Ratioという単語は、受動態、能動態のどちらにおきましても主語として使うことが可能です。
Google searchの.org ドメインで'ratio was decreased' を検索してみると:こちら
同様に 'ratio decreased' をGoogle searchの.org ドメインで検索してみると:こちら
以上の検索結果から、どちらの表現も正しいことがわかります。
今回は、あるものがratioを減少するように作用したことを表現したかったので受動態を用いるのが良いと判断しました。
ただし、能動態も間違いではありませんので、ご希望でしたら使ってもかまいません。
その回答対する著者からのお返事です:「ありがとうございます。クリアになりました。」
特に.org domains という Googleに特有な検索フィルター (検索ボックスに“site: .org”という記載を付加して検索する) を用いた点にご注意ください。
こうすることにより、検索範囲を(できれば)より高いレベルの(=より根拠のしっかりした)英語に限定することができます。
もう一つの例は、我々がアブストラクトに‘hence’ という単語を加えたことに対してなされた排尿障害分野の研究者からの質問です:
御社のために、指摘すると、
アブストラクトでHenceをいれるような
翻訳者は、私でなくても、通常の医師なら、
おかしいと感じます。
私は、来年に大切な論文があったので、
失礼ながら、御社の実力を 試す意味もあって、
今回小さな依頼をしたので、ダメージは少なかったのですが…
以下が我々の回答です:
また、'Hence'という単語をアブストラクトで使用する件についてですが、
PubMed上で'Hence'を含むアブストラクトは115,335 本に及びます。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?term=hence%5BTitle%2FAbstract%5D
こちらは、'hence'及び'dysuria'とともに'.org'を含むGoogle検索を用いた結果です。
352,000の結果が確認できます。また、こちらは'therefore'及び'dysuria'とともに '.org'を含むGoogle検索を用いた結果です。
413,000の結果が確認できました。
上記の結果より、弊社ではabstractでHenceを使用することは問題ないと考えております。
ご理解賜ります様宜しくお願い致します。
このように、我々はGoogle とPubMedを医科学分野で使用可能な標準英語であることを確認するために利用します。あなたが英語を書くときにも使用を検討すべきすばらしいツールです。さらに便利に検索するためにGoogleは使用方法についてオフィシャルな記事を提供しています。こちらをお読みください。
https://support.google.com/websearch/answer/136861?hl=ja
操作方法を全部覚えられないのでしたらGoogle’s Advanced Search formをお使いください。
http://www.google.com/advanced_search
このformを使えば検索分野を絞り込むことができます。Search operatorは迅速に検索できる素晴らしいツールですが、研究分野での検索にはGoogle Advanced Searchをお使いになるのが良いでしょう。
見識の記述について
2013年9月13日、執筆者:Steve Tronickカテゴリー: Language/Grammar
トピックについての見識を記述する場合、適切な説明を補足しないと読者に批判される可能性があります。
例えば、「がん幹細胞の自己再生におけるBRAFリン酸化の役割はほとんど知られていない」や「がん幹細胞の自己再生におけるBRAFリン酸化の役割は不明である」のような文章がよく引用文献なしで述べられますが、「ほとんど知られていない」は「何かが知られている」の意味であり、このトピックについて論文が発表されているとしたら、それを記載すべきです。
また、ある主題についての論文の数と知識の深さとは必ずしも一致しません。論文の著者は、自身の論文の内容が「不明」や「ほとんど知られていない」の根拠と見なされるとは思ってもいませんし、同様にあなたは、先の著者があなたの論文を「不明」や「ほとんど知られていない」の根拠にする可能性があるとは思いもしません。
見識を表現するには「がん幹細胞の自己再生におけるBRAFリン酸化のメカニズムについては知られていない」のような正確な文章が良いでしょう。考慮に入れなければならないのは、あなたがどの程度文献検索を行ったのかという疑問をレヴュアー(reviewer) や読者に持たれるかも知れないという点です。したがって説明は細心の注意を払って行い、文献はできる限り引用すべきです。
同様に、例えば「上皮細胞におけるBRAFリン酸化の研究が同様に行われてきた[3–6]」のようにあるトピックの研究が行われてきたことを結果なしに書くことは、曖昧さを残すのでやめた方がよいでしょう。論文の著者は、インターネット上の情報(ハイパーリンクで参照も可)にすぐアクセスできるようにするなどの方法で、読者に研究結果がよく理解できるように努力すべきです。
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