生命の写真

あなたは「鼻の内部は美しい」と考えたことがありますか。
科学誌サイエンスのコンテスト、Visualization Challengeの2007年度優秀賞には、アートでメッセージを伝えている科学者たちが選ばれました。
香港の放射線科医Kai-hung Fung氏は、鼻の内部をはじめ、生物がもつ構造的な美しさを、独自のアートとして表現しました。別の入賞者は、コンピューターグラフィクスの最新技術により、タバコ中毒のメカニズムからハリケーン分析にいたるまで、幅広い分野で教育ツールを作りました。

Article written by Guy Harris


誤りがちな「more than」の使い方

日本の研究者が英語論文でよく使う表現に、「more than」 があります。私が最近チェックした論文でも、次のようなセンテンスがありました。
“The plates should be incubated for more than 18 hours,”
この文を見た時、私には非常に曖昧な表現であると感じられました。18.1時間なら良いのか。19時間だったらどうなのか。
この曖昧さは、日本語の「〜以上」という表現が英語の「more than」 と同じであると考えることから生ずるのではないかと思いました。
ネイティブスピーカーでしたら、この文章には「more than」 ではなく「at least」を使うでしょう。
「more than X」とは、「>X」を意味し、Xは対象に含まれていません。
一方、「at least」は、「≥X」を意味し、Xを対象として含んでおり、日本語の「X 以上」という意味に相当します。
「more than 18」とは、「18を含まない、それより多い数」、「more than 3 mL」は「3 mLより多い量」を意味するだけで、小数点の何位までなら許されるのかといった許容範囲は不明です。
したがってナチュラル な英語とはいえず、読み手を混乱させます。
結論として、日本語の「〜以上」を英語で適切に表現するには「more than」 ではなく「at least」を使うことをお薦めします。

[具体例]

× : “More than 3 mL of blood should be collected.”
○ : “At least 3 mL of blood should be collected.”

× : “The reaction time was more than 1 min.”
○ : “The reaction time was at least 1 min.”

× : “The solution is stable at room temperature for more than 24 hours.”
○ : “The solution is stable at room temperature for at least 24 hours.”

× : “Add more than 10 mL of solvent to ensure complete dissolution.”
○ : “Add at least 10 mL of solvent to ensure complete dissolution.”


略語に付ける冠詞

先日、初心者が英語の科学文書を書く時によく抱く疑問について回答を求められました。
「省略語や頭字語に冠詞を付ける場合、 ‘a ’ なのか、それとも‘an’ なのか、どのように決めるのですか?」と。

アメリカ化学会(the American Chemical Society ・ACS)の指針によれば、省略語や頭字語に付す冠詞は、その省略語や頭字語の最初の文字の「発音」に委ねられます。

つまり、最初の一文字の発音が母音(a,e,i,o, and u),なら‘an’を、それ以外なら‘a ’を使うことになっています。

  • The samples were run on an HPLC system
    Hは“ay-ch”と発音されるので、‘an’が使われています。
  • The samples were extracted using an SPE column.
    Sは“ess”と発音されるので、‘an’が使われています。
  • The results were presented at a CDM conference in 2006.
    Cは“see”と発音されるので、‘a’が使われています。
  • The samples were pipetted with a YDPM Pipette Master 3000.
    Yは“why”と発音されるので、‘a’が使われています。

‘a ’または‘an’のどちらを使うかの選択は、発音が母音なら‘an’をそれ以外なら‘a ’を使う。つまり、略語ではない通常の単語とまったく一緒なのです。


アドバイス:投稿はポジティブな姿勢で

先日、論文を学術誌に投稿し 査読者からコメントを受け取った研究者から、その後の対応について相談したいとの連絡をもらいました。彼は、査読者Aの‘Accept after revision’ および査読者Bの‘Reconsider after extensive revision.’ というコメントから、投稿した論文は完全に否定され、アクセプトされそうにないと早合点したのです。

特に査読者Bのコメントは厳しく、多くの部分を書き変えるよう要求していました。彼はそのジャーナルをあきらめ、他のジャーナルへの再投稿を検討すべく、その論文の関連書類を全て私に送付し、意見を求めてきました。

以下は、私の返信です。

Y先生へ

はじめに・・・良い返事が来て良かったですね。あなたは、編集者が‘The paper cannot be accepted in its present form and will require extensive revision’と言っているものと判断してあきらめているようですが、この査読者コメントなら、かなり良い結果だと思います。修正なしでアクセプトされる論文などめったにありません。編集者の言葉は厳しく聞こえるかもしれませんが、否定的な評価をしているわけではなく、最終的にアクセプトされない可能性も残されているため、あなたに過度の期待をもたせないようにしているのです。

査読者への回答がアクセプトの鍵

ここが頑張りどころです。査読者へどのように回答するかが、アクセプト可否の鍵を握っています。私は、関連書類を全て読んだ後、次のように提案いたしました。

  1. まず、査読者が指摘している点について、すべて回答します。詳細な回答見本ファイルを添付します。書式は次のようにすると良いでしょう。
    • Response to Reviewer 1: Comment: The manuscript may benefit from additional analysis of….  Response: As the reviewer noted, there is a possibility of ... Therefore, we have added the following text (p. 18, lines 4-9).... “Unfortunately, we could not classify cases by ...” Further, we have changed the following text (p. 1, lines 11-13): “During this time, a number of men were newly diagnosed with ...” to “During this time, 104 men were newly diagnosed with ....” We have also added the following reference: “25. Nakamura N, Tamura M. Isoflavone consumption in relation to lung cancer. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2006;12:138-45.” ...and so on.
    • Response to Reviewer 2: Comment:  The statement that risk of total or localized cancer did not differ ... Response: In accordance with the Reviewer’s comment, we have changed the following text (p. 1, line 13): “Intake was not associated with total or localized prostate cancer.” to “Intake was not associated with localized prostate cancer.” ...and so on.

     

  2. 査読者が指摘したそれぞれの点について、あなたは納得するのかしないのか、意見/理由を述べましょう。書き直した原稿にも、元原稿から変更した箇所のページ番号と行番号を記載するのを忘れないようにして下さい。重要なことは、あなたは査読者の意見すべてを受け容れる必要はないと言うことです。もし、はっきりとした理由があって納得できないのなら、それを説明すれば(私は10ページ、20ページに及ぶ回答書を見たこともあります。必要に応じて図や表も加え、説得力のある回答書を作るべきです)、編集者も理解してくれるはずです。査読者の意見に反対するには、編集者にとっても十分な正当性が必要です。編集者に受け容れられるような、説得力のある回答を書くべきなのです。
     

  3. 今回の投稿先をあきらめて、他のジャーナルにチャレンジしようなどとは考えないで下さい。再投稿は時間的なロスも大きく、お勧めできません(再投稿した結果、その論文が世に出るまでに18ヶ月も余分にかかってしまう例もあります)。 現在トライしているジャーナルにアクセプトされるよう、全力を傾けましょう。たった1人の査読者の意見に落ち込んでいてはいけません。繰り返しになりますが、ジャーナルの編集者は、あなたが 科学的な正当性を示すことができれば(事実もしくは詳細な説明によって)、査読者の意見を退ける可能性もあるのです。
     

  4. あなたの書いた回答書を同僚や上司にも見てもらい、意見を聞くことをお勧めします。
     

  5. 回答書が書きあがったら、我々にチェック/校正させて下さい。より良い内容にするために、できる限りのお手伝いをいたします。しかし、最終的にはあなたが管理/責任者であることを忘れないで下さい。
     

  6. 以下のページも参考にして下さい。



今回の経験は、ジャーナル編集部対策として良いトレーニングになったことと思います。今後の結果を楽しみにしています!

Guy

 


オープンアクセスについて:2

オープンアクセス(無料公開)の是非について議論が続いていますが、目下、出版社側の反撃が勢いを増しているところです。Elsevier、 Wiley、 アメリカ化学会など主要出版社が属するアメリカ出版協会(AAP:Association of American Publishers)の一部会員会社は、盛り上がりを見せているオープンアクセス運動に対抗するため、PR(広報)活動の専門家をコンサルタントとして雇い入れました。オープンアクセスが現実化した場合、購読料で支えられている伝統的な雑誌は生き残れないのではないかと懸念しているのです。

英政府は、国立衛生研究所の助成を受けている研究者の論文がアクセプトされた際、論文コピーをPubMed Centralへ提出することを義務づけようとしています。この案を廃止の方向に導くために、AAPのPRコンサルタントは、論文コピーの提出が義務づけられた場合に生ずる懸念や不安材料をアピールするよう提案しました。たとえば「アクセプト後のプロセスがうまく行かず、出版されなかったらどうするのか?」「政府が広めたい情報だけを作為的に一般公開するとしたら、それは検閲になるのではないのか?」といった点を出版社側から問うべきだと。

科学者側の団体がどのような反応を見せるかはまだ明らかではありませんが、商業的出版とオープンアクセス出版との主導権争いの結論は、最終的には世論の動向によって決着するのではないかと思われます。




 

Article written by Guy Harris


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