重要と言う言葉の重要性

統計学者は、“significant” の前に “highly” の様な副詞を使用する事はありませんが、統計学者以外の研究者は、 “significant” 、 “highly significant” を P < 0.05 であることや P < 0.01 であることを報告する場合などに極普通に使用してきました。 しかし、その様な従来の使用法を禁じ、その代わりに研究結果の重要性については読者に判断を委ねる様な表現をする様、筆者に要求する雑誌も出てきました。違いが significant 重要である(または、highly significant 大変重要である, あるいはnon-significant 重要でない)と、筆者がはっきりと述べるのではなく、“…a difference (P < 0.05) was noted between control and treated samples.” の様な記述が推奨されているのです。さらに、Pの値についても、単に “< 0.05” の様に記すのではなく、可能な限り正確に値を記述する様、要求されています。

つまり、いくつかの雑誌は
“We noted a significant difference between control and treated samples (P < 0.027).”
ではなく、
“We noted a difference (P = 0.027) between control and treated samples.”
と言う形の記述を推奨しているのです。


この様な表記法は、読者の解釈に、より自由度持たせる事が出来ますが、今まで科学分野の中では当たり前に使われて来た言葉を避けて論文を書こうとするあまり、論文が読み辛くなってしまう恐れもあります。
科学者は、研究結果をあるがまま読者に伝える為には、論文の読み易さを犠牲にするべきなのでしょうか?

「統計的に重要」をその他の点の重要と混同してはならない

次に “insignificant” と “non-significant” と言う単語について考えてみましょう。これらの2つの単語は、どちらも日常会話の中で「重要ではない」、「取るに足らない」と言う意味として曖昧に使われがちです。“significant” も同様に日常会話の中では曖昧さがありますが、「P」の価値を明確に引用すれば、その様な曖昧さは回避する事が出来ます。科学者は「違いが重要ではない」イコール「重要ではない」ではない事は、良くわかっています 。実際、重要ではない発見が、研究結果全体に大きな影響を及ぼす事もあります。この様な曖昧さを排除する為に、従来の表現に代えて明確な数値に基づく発表をするべきだと言う議論がされていると考えられます。

 とは言え、この様なニッチな単語/表現も、統計学者以外のボキャブラリーの中では「あり」でしょう。これらの使用が一般的に認められ続けていると言う事が、その何よりの根拠です。現時点での最善策は、結局、この様な言葉の使用法についての議論が尽くされるまでは、雑誌ごとの各々の基準にあわせる事ではないかと思われます。
 


先入観をもたせやすい単語は避ける

論文を書く際、研究者は読者に間違った先入観を与えそうな単語の使用はできるだけ控えたほうが良いでしょう。なぜならば、そのような単語は、単語そのものに偏った意味があるため、単語を見ただけで読み手が先入観を持ってしまうのです。

例えば、多くの論文やレポートで“severity”が病気の重症度を示す単語として使用されています。ところが、英語のネイティブスピーカーにしてみれば“severity”と言う単語そのものから悪い病状が連想されるため、良い結果の際に“severity”を使用されていると奇妙に感じられます。

X: “The doctor said that, due to the severity of the disease, the patient would survive.” (implied: “The patient will live, so the disease is not severe”)
  医者は、病気の重症度次第で患者は生き延びるだろうと言った。(暗に「病気は深刻ではないので、患者は生き延びるだろう」と言っている)
O: “The doctor said that, due to the severity of the disease, the patient would die.” (implied: “The patient will die, so the disease is severe”)
医者は、病気の重症度次第で患者は死ぬだろうと言った。(暗に「病気は深刻な状態なので、患者は死ぬだろう」と言っている)

読者に誤解を与えないためには、“progress” または“degree”の様な中立的な単語を用いるか、あるいは状況を具体的に記述したほうが良いでしょう。

Disease progression was graded on a scale of 1 to 5, with 1 representing no progression and 5 representing a severe case.”
病気の進行は1〜5までの5段階に分けられ、1は進行がない状態を表し、5は深刻な状態を表す。

“The doctor said that, due to excellent prognosis, the patient would survive.”
医者は、予後の状態が良ければ、患者は生き延びるだろうと言った。

とは言っても、非常に病気の状態が悪い場合を述べる際は、読み手が単語そのものから「悪い」という連想をしても問題はないので、 “severity”のような単語を使っても必ずしも間違いではありません。

同様に、物事の起こり易さを表現する単語として “ease” が、しばしば使用されています。

しかし “ease” という単語も、単語そのものに偏った意味があります。 degree of ease(起こり易さ)を中立的に表すのではなく、むしろ “easy” (簡単に起こる)と言う意味合いのほうが強いのです。
起こり易さを示す場合には、偏りのない“likelihood” または “tendency”のような単語を使うほうが良いと思われます。

X: “The ease of dissociation from the M3 receptor…” [M3受容体からの解離のし易さ…]
O: “The likelihood of dissociation from the M3 receptor…”
O: “The tendency towards dissociation from the M3 receptor…”


論文発表のためのヒント

Science誌(リジェクト率90%!)の編集者が語る科学系学術誌での論文発表のヒント

論文をアクセプトに導くためにおおいに参考になる記事を、Science誌の副編集長Katrina Kellerが書いています。Science誌に寄せられる年間12,000報もの論文のうち90%がリジェクトされており、この記事のアドバイスは読む価値があります。

Science誌の編集者として、優れた論文とは、革新的な研究結果を提示しているものだということは良く承知しています。しかしまた優れた論文は、その内容を明確で論理的な筋道に従って語っていなければなりません。論文の背後にある思考が明確だからこそ、文章も明確になります。優れた研究論文を書くには、戦略的な考え方、トレーニンング、そしてノウハウが必要であると思います」

「提出する論文のクオリティは最高に磨き上げましょう。読者は、発表された論文のクオリティによって、その背後にあるレベルの高さを判断するものです。投稿先の編集者や査読者も同様です。書き方が雑駁であると、綿密に行われた実験も台無しになってしまいます。論文の原稿にはケアレスミスがないことが重要です。また、形式を軽視しないこと。文章が明瞭/簡潔に書かれ、スペルミスや文法上の間違いがなく、さらに論理が歯切れよく明快であることがとても重要なのです」
この記事の全文は、下記でご覧いただけます。

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学術誌における写真の不正加工

NYタイムスのニコラス・ウェード記者は、「写真の不正加工が科学分野で大きな問題となっている。すでにいくつかの学術誌はこの問題について対応し始めた」と報告しています。

「The Journal of Cell Biologyが論文中の写真に不正加工があるかどうか調査したところ、そうした例が広範に存在することが明らかになった。学術誌の編集部で、同様の調査を検討しているところもある」そうです。

また「こうした事例のうち1%で、データの改ざんが行われていることも明らかになった」といいます。

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現行の査読プロセスで、科学分野における新知見の公表方式は正当といえるか?

査読者は横暴ではないか? 改善の余地はないのか? 査読する側(査読者)も査読される側(著者)も、これで良いと言えるほどの経験を持ち合わせていない。Kevin Dewalt は、査読者に対する10大クレームをリストアップし(下記を参照)、その改善策を考察している。

クレームには次のようなものがある。

  • 潜在的に感じた、査読者と著者の利害の対立。査読者も著者も、発表内容から何らかの影響を受ける人物や団体と関連している可能性がある。
  • 査読者は、一般的に派閥や学閥などとの関わりで選ばれる傾向にある。新規のアイデアはこれらの派閥外から出てくることが多いのだが、往々にして既存の体制により却下され、発表に至らないことが多い。素晴らしいアイデアが日の目を見ないことも珍しくない。
  • 優先権は、新理論を考え出した人ではなく、コネのある人に与えられることが多い。
  • 査読および査読者が「査読」されることがない。偏向したあるいは浅薄な批判的査読の結果を受け取った著者は、これに対して反論をする機会も与えられず、別の査読者のコメントを求めることもできない。

このような現況を打開する方策はあるのか。ひとつの案は、論文をインターネットのブログ形式で発表するというものである。そこでは誰でも著者に対して賛同、批判、あるいは質問を投稿し、論文への反応を示すことができる。あるいは派閥的な偏向をなくすために、査読者を精査する組織を設置するのも一案である。どちらの提案も、従来の査読システムに風穴を開け、あるべき方向へと新風を吹き込むことだろう。

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