「recent」の本当の意味

カテゴリー: Language/Grammar

論文読者の大多数は、「最近の (recent) 論文」とは過去12箇月以内に出版された論文を意味すると考えています。一方、DMCに相談してくる執筆者のほとんどは、過去5〜10年に出版された論文を「最近の論文」と考えています。「最近の」という表現の意味を、読者に正確に伝えるため、できるだけ本文中や引用文献に当該論文の出版年を記載する様にするべきでしょう。

あなたの論文は(オンラインでもハードコピーでも)時として出版までに予想外の期間を要することもあり、それが出版される時には引用文献のほとんどが「最近の論文」ではなくなっているかもしれないのです。
 


ノセボ現象–インフォームドコンセントとの板挟み

カテゴリー: General Science Items

プラセボ現象のことは良く知られています。ではその反対の効果である「ノセボ現象」について聞いたことがありますか?

Journal of the German Medical Associationに問題提起の論文が掲載されました。その内容は、医師や看護士が患者に実施する医療的ケアの結果について十分な情報を伝えようとすると、それが薬の副作用や、医療処置による不快症状を悪化させるかも知れないというものです。この背景には「ノセボ効果」という現象があります。次の文はその論文からの引用です。

ノセボ現象は臨床診療で普通に見られるもので、最近は基礎研究者や臨床医師、倫理学者の間でよく研究・議論されるトピックとなっている。

2013年12月5日にPubMed検索した結果、「ノセボ」についての論文は213編、そのうちの20%が実証的研究、それ以外は編集者への手紙 (Letter to the editor)、解説、論説、総説でした。一方、「プラセボ」についての論文は165,000編にのぼりました。
 
ノセボ現象とはどのぐらい強いものなのでしょうか。三環抗うつ薬(TCAs; 21 論文)および選択的セロトニン再吸収阻害薬(SSRIs; 122 論文)の無作為対照試験の総説によると、有害事象の発生率はTCA試験(投与群とそのプラセボ群)の方が SSRI試験(投与群とそのプラセボ群)より有意に多く、 TCAのプラセボを投与された患者では、SSRIプラセボを投与された患者に比べ、口渇(19.2% 対 6.4%)、視覚異常(6.9% 対 1.2%)、疲労(17.3% 対 5.5%)、便秘(10.7% 対 4.2%)を訴える率が有意に多かったとの事です。

著者はさらに次のように述べています:

医師は提案した治療法について、患者が十分な情報に基づいて受け入れを決断できるように、それを実施した場合に起こりうる副作用について知らせざるを得ません。
一方、医師は状況説明に伴って生ずるリスクを含め、医療介入が患者に及ぼすリスクを最小に抑えなければなりません。患者への説明がノセボ反応を引き起こすかも知れないのに...


Google search operatorとPubMedで英文をより良いものに

カテゴリー: Language/Grammar, Paper Writing

英文をより良いものにする、あるいはある表現があなたの専門分野で普通に使われている表現かどうかを確かめるGoogle search operatorとPubMedを用いた方法をお奨めします。

我々が著者からの質問に答える際にGoogle search operatorをどのように利用しているかをお示ししましょう。

次の英文は著者が最初に書いたものです:

I/E ratio significantly decreased in the presence of ketoconazole

これを我々は次のように変更しました

I/E ratio was significantly decreased in the presence of ketoconazole.

それに対して著者から次のような質問があしました:「1点質問させてください。文を受動態(Passive)にされた理由を知りたいのですが,よろしいでしょうか?」

以下が我々の回答です:

Ratioという単語は、受動態、能動態のどちらにおきましても主語として使うことが可能です。

Google searchの.org ドメインで'ratio was decreased' を検索してみると:こちら

同様に 'ratio decreased' をGoogle searchの.org ドメインで検索してみると:こちら

以上の検索結果から、どちらの表現も正しいことがわかります。

今回は、あるものがratioを減少するように作用したことを表現したかったので受動態を用いるのが良いと判断しました。
ただし、能動態も間違いではありませんので、ご希望でしたら使ってもかまいません。


その回答対する著者からのお返事です:「ありがとうございます。クリアになりました。」

特に.org domains という Googleに特有な検索フィルター (検索ボックスに“site: .org”という記載を付加して検索する) を用いた点にご注意ください。
こうすることにより、検索範囲を(できれば)より高いレベルの(=より根拠のしっかりした)英語に限定することができます。

もう一つの例は、我々がアブストラクトに‘hence’ という単語を加えたことに対してなされた排尿障害分野の研究者からの質問です:

御社のために、指摘すると、
アブストラクトでHenceをいれるような
翻訳者は、私でなくても、通常の医師なら、
おかしいと感じます。
私は、来年に大切な論文があったので、
失礼ながら、御社の実力を 試す意味もあって、
今回小さな依頼をしたので、ダメージは少なかったのですが…

以下が我々の回答です:

また、'Hence'という単語をアブストラクトで使用する件についてですが、
PubMed上で'Hence'を含むアブストラクトは115,335 本に及びます。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?term=hence%5BTitle%2FAbstract%5D
こちらは、'hence'及び'dysuria'とともに'.org'を含むGoogle検索を用いた結果です。
352,000の結果が確認できます。

また、こちらは'therefore'及び'dysuria'とともに '.org'を含むGoogle検索を用いた結果です。

413,000の結果が確認できました。

上記の結果より、弊社ではabstractでHenceを使用することは問題ないと考えております。
ご理解賜ります様宜しくお願い致します。

このように、我々はGoogle とPubMedを医科学分野で使用可能な標準英語であることを確認するために利用します。あなたが英語を書くときにも使用を検討すべきすばらしいツールです。さらに便利に検索するためにGoogleは使用方法についてオフィシャルな記事を提供しています。こちらをお読みください。

https://support.google.com/websearch/answer/136861?hl=ja

操作方法を全部覚えられないのでしたらGoogle’s Advanced Search formをお使いください。

http://www.google.com/advanced_search

このformを使えば検索分野を絞り込むことができます。Search operatorは迅速に検索できる素晴らしいツールですが、研究分野での検索にはGoogle Advanced Searchをお使いになるのが良いでしょう。
 


見識の記述について

カテゴリー: Language/Grammar

トピックについての見識を記述する場合、適切な説明を補足しないと読者に批判される可能性があります。

例えば、「がん幹細胞の自己再生におけるBRAFリン酸化の役割はほとんど知られていない」や「がん幹細胞の自己再生におけるBRAFリン酸化の役割は不明である」のような文章がよく引用文献なしで述べられますが、「ほとんど知られていない」は「何かが知られている」の意味であり、このトピックについて論文が発表されているとしたら、それを記載すべきです。

また、ある主題についての論文の数と知識の深さとは必ずしも一致しません。論文の著者は、自身の論文の内容が「不明」や「ほとんど知られていない」の根拠と見なされるとは思ってもいませんし、同様にあなたは、先の著者があなたの論文を「不明」や「ほとんど知られていない」の根拠にする可能性があるとは思いもしません。

見識を表現するには「がん幹細胞の自己再生におけるBRAFリン酸化のメカニズムについては知られていない」のような正確な文章が良いでしょう。考慮に入れなければならないのは、あなたがどの程度文献検索を行ったのかという疑問をレヴュアー(reviewer) や読者に持たれるかも知れないという点です。したがって説明は細心の注意を払って行い、文献はできる限り引用すべきです。

同様に、例えば「上皮細胞におけるBRAFリン酸化の研究が同様に行われてきた[3–6]」のようにあるトピックの研究が行われてきたことを結果なしに書くことは、曖昧さを残すのでやめた方がよいでしょう。論文の著者は、インターネット上の情報(ハイパーリンクで参照も可)にすぐアクセスできるようにするなどの方法で、読者に研究結果がよく理解できるように努力すべきです。


統計学的有意性をレポートするべきか?混乱する現状

現在、論文の中で統計学的有意性を述べるべきか否かについて、研究者は大変混乱させられています。
P値について論文上で言及するべきなのでしょうか、それとも、するべきではないのでしょうか?
いくつかのジャーナルは、P値についての記載を積極的に止めさせようとしていますが、それも常にはっきりと指示している訳ではありません。
先日、私達は、あるクライアント宛に届いたエディターからのレターを読む機会がありました。
そのクライアントは、ジャーナルに論文を投稿した所、査読者のコメントと共に論文が戻って来た為、論文を再投稿しました。すると、エディターから以下の様な追加コメントが送られて来たのです。


“私共はあなたの論文の発表について、前向きに検討しています。
しかし、エディターの最終決定の前に、次の懸案事項が考慮された 修正版を頂きたいのです。

1)まずはじめに、P値に対する私たちの方針が、混乱を招いてしまっていることに対しお詫び申し上げます。

確かに査読者の一人は、さらなるP値を要求しましたが、ジャーナルの方針としては、P値ならびに(特に)統計有意性のディスカッションは記述しない様、強く要求します。
動向調査に関しては記載を認めますが、P値はtable1とtestから消去されるべきです。
統計上の有意性についての言及は消去されるべきです。”

これは非常に興味深い事例です。
ある査読者はP値の追加を要求したのに対し、ジャーナルのpolicyはそれに反対したのです。
残念な事に、査読者のコメントが著者に送られる前に、この矛盾が判明しなかった為、その著者は、不要な追加の仕事をしなければなりませんでした。
統計学的有意性の記載についての混乱気味な現状がよくわかる興味深いケースです。


あなたの研究分野で同じ様な問題は起きていませんか?


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